前回「橋出血」の基礎について報告しました。
今日は、それを踏まえて先行研究をまとめ、担当した症例に用いた理論を報告します。
橋出血に対する症例報告
英語が苦手な私は、症例報告は日本語のみで調べることが多いです。
各国の医療背景なども考慮しながら症例報告を分析することができず、逃げています。笑
すぐにヒットし、無料で読める3件をまとめました。

私が解釈しやすいように情報は極力抜いています。詳しく読みたい人は調べてくださいね。
まず、治療内容の詳細が書かれていて、論文となって症例報告をしているものは、私の調べた範囲ではありませんでした。
3件とも学術大会での抄録をまとめたものですので、不十分な情報であり、ミスリードを起こしてしまうかもしれません。
↑「じゃあ、まとめるなよ!」
と突っ込まれそうですが、それでも今、担当している患者治療に困っているので、何とか役立てるようにするしかありません。
松崎哲治「橋出血患者の姿勢制御に対する治療一症例における八ヵ月間の変化」2003年
症例
・若年であり、海綿状血管腫が由来の橋出血
・体幹・左上下肢に中等度失調と筋緊張低下
・頚部・右上下肢の過剰活動による異常姿勢筋緊張
・歩行は不可
・FIM合計89点
治療のポイント、私の解釈
・姿勢制御中心の課題指向型アプローチ
・運動学習と失調・筋緊張・体幹機能の改善
(1)難易度調整(視覚代償、感覚入力、随意性)
(2)リズミカルな歩行
(3)重心移動・立ち直りの練習
岩下夏希「橋出血後、運動失調を呈した一症例~屋内独歩・階段昇降自立に向けて~」2017年
症例
・体幹・末梢に運動失調
・SARA14/0点で上下肢末梢に運動失調
・TIS8/23点で体幹協調性に減点項目
・MB14/28点で予測的姿勢制御と反応的姿勢制御に減点項目
・表在・固有感覚は上下肢末梢に中等度鈍麻
・独歩は軽介助で可能
・FIM合計81点
治療のポイント、私の解釈
・姿勢制御中心の課題特異的アプローチ
・体幹・下肢の協調性
(1)ブリッジ運動
(2)重心移動
(3)ステップ位でのトレーニング
牧芳昭「重症脳幹出血により両片麻痺・四肢体幹の運動失調を呈した患者に対する装具療法-体幹付き両長下肢装具の使用経験-」2018年
症例
・運動失調は左上下肢優位の四肢
・躯幹協調stageはⅣ、FACT1/20点
・感覚障害は表在(正常/軽度)・深部(正常/重度)
・FIM歩行1点
治療のポイント、私の解釈
・装具療法を用いた課題指向型アプローチ
・難易度調整による運動学習、量の確保による機能改善
(1)装具を段階的に調整した立位・歩行練習
3件の報告の私の解釈
姿勢制御中心の課題指向型アプローチとは、トップダウンでの治療。姿勢制御を基準課題として、動作を反復練習していたり、部分練習を行っている印象を持ちました。
姿勢制御中心の課題特異的アプローチとは、ボトムアップでの治療。姿勢制御を基準課題として、動作を阻害している機能に着目して治療をしている印象を持ちました。
装具療法を用いた課題指向型アプローチとは、運動学習理論である難易度調整を用いて、装具を段階的に調整して立位・歩行練習を行っている印象を持ちました。
どの治療方法も一般的な理学療法でよく行う理論かと思います。なぜその治療理論を選択したのか気になりますね。
いずれにしても3件に共通していることは、
体幹機能に対して、積極的な治療介入をしているということでした。
私が担当した症例にどのような理論を用いたか
ネット上で症例報告は御法度なので、理論だけ紹介致します。

少しでも治療のヒントになればいいなと思います。

感覚機能練習の原則が、普段の課題指向型アプローチに用いている運動学習理論と同じ内容が多くて、驚きました。
コメント